人材紹介会社の集客から顧客管理までを一体化した業務基盤の開発
LINE を起点にした集客と応募者対応を、まず既製品 (Lステップ) で素早く立ち上げ、事業の成長に合わせて自社基盤へ移行。広告の成果を実際の登録データで測り、AI で分析して改善を回せる状態にした。
どんな会社の、どんな仕事か
求職者と提携企業を結ぶ人材紹介会社です。求職者は LINE 公式アカウントを友だち追加するところから始まり、適性診断やアンケートで希望を伝え、担当者が相談に乗ったうえで提携企業を紹介します。集客はウェブ広告が中心で、「広告を見た人が LINE に登録し、相談を経て成約する」という流れを、いかに太く、無駄なく回すかが事業の要です。求職者から見た流れは次のとおりです。
当社は事業の立ち上げから関わり、集客用のページ、LINE まわりの仕組み、運営の管理画面、提携企業向けの画面までを一貫して担当しています。
最初は既製品で始めた
立ち上げの時点では、LINE のメッセージ配信とアンケートに既製品 (Lステップ) を使うことにしました。これは当社からの提案です。
理由は単純で、まだ業務の型が固まっていない段階で自前のシステムを作ると、作ったそばから作り直しになるからです。既製品なら数日で動き始め、「どんな質問をすれば相談につながるか」「運営は日々どの情報を見たいか」を、実際の応募者を相手に確かめられます。費用も小さく、やめるのも簡単です。
実際、数か月のうちに「診断からアンケート、相談へ」という流れと、運営が確認したい情報の形がはっきりしました。最初に既製品を選んだ判断は、いま振り返っても正しかったと考えています。
既製品では足りなくなった理由
事業が伸びるにつれて、三つの壁にぶつかりました。当時の仕組みを図にすると、道具がそれぞれ独立していて、互いにつながっていないことが分かります。
一つ目は、広告の成果と実際の登録・成約がつながらないことです。応募者のデータが Lステップの中に閉じているため、どの広告から来た人が登録し、相談に進み、成約したのかを追えません。広告費をどこに寄せるべきか、勘で決めるしかない状態でした。
二つ目は、導線を改善したくても既製品の機能の範囲で止まることです。診断の結果に応じて声かけの文面を変える、入力途中で止まった人にだけ別の案内を送る、といった細かな打ち手が打てません。
三つ目は、応募者のデータが自社の手元に残らないことです。サービスを乗り換えたくなっても、蓄積したデータを持ち出せる保証がありません。
Lステップが悪いのではなく、事業が既製品の想定を超えたということです。道具を変える時期が来た、と判断しました (この考え方はブログ記事「脱エクセルの落とし穴」にも書いています。解約前に確認したことと移行の手順は、記事「Lステップを解約する前に確認すること」にまとめました)。
自社基盤に移した
移行後の全体像は次のとおりです。四つの画面群が、一つの自社データベースを共有しています。
- 求職者向け: 地域・職種ごとの案内ページ、適性診断、アンケート (途中保存と写真添付に対応)、よくある質問への自動応答
- 自動処理: 診断の 10 分後の声かけ、アンケート未回答者への翌日以降の追いかけ、入力途中で止まった人へのフォロー、運営への通知
- 運営向け管理画面: 応募者の一覧と詳細、対応状況の管理、個別メッセージの送信、今日やるべき対応のリスト、成約の記録
- 提携企業向け: 提携企業が自分で募集情報や募集状況を更新できる画面と、そこから自動生成される紹介ページ
どの画面で起きたことも同じデータベースに集まるので、「この人はどの広告から来て、何と診断され、何を希望し、いまどの段階か」が一画面で分かります。
マーケティングを数字で回す仕組み
このプロジェクトでもっとも力を入れたのが、集客を感覚ではなく数字で改善できる仕組みです。
「どこから来た人が登録したか」を全部記録する
仕組みは一つの輪になっています。広告のクリックから登録までを記録し、その登録を広告に返すと、広告がより登録しやすい人に向かって配信されます。
LINE への登録が成立した瞬間に、その人がどの広告のどのボタンから来たのかを自社データベースに記録します。スマートフォンのプライバシー設定によってアクセス解析ツールが取りこぼす分も、サーバー側で補って記録します。
記録した登録は、6 時間おきに広告の管理側へ送り返します。これにより広告は「クリックされた」ではなく「実際に登録した人」を学習するようになり、広告費が登録につながりやすい人に向かって使われるようになりました。
この仕組みの考え方と、既製のツールで測る場合との違いは、記事「LINE 登録を広告の成果として測る方法」で詳しく解説しています。
AI にデータを横断させて原因を探す
広告の管理データ、アクセス解析、自社データベース、ページ上の行動記録の四つを、AI が直接照会して分析できるようにしました。分析用の画面や集計の仕組みを作り込むのではなく、「なぜこの週は登録が減ったのか」といった問いごとに、AI がその場でデータを引いて答える方式です。
これが効いた実例があります。ある職種向けの広告キャンペーンで、登録率が別の職種向けの 8 分の 1 にとどまりました。AI で横断分析したところ、流入してきた人は本物の求職意図を持っていて、ページの滞在時間はむしろ長い。つまり「読んだうえで、自分向けではないと判断して離脱している」と分かりました。原因は、ページの訴求が別の職種の文化のままだったことです。そこで専用ページを新設し、広告文を書き換え、無駄なクリックを生んでいた検索語を除外キーワードとして 18 語追加しました。原因の特定から対策まで、数日で立て直しています。
効かないものは捨て、効くものを育てる
数字が手元にあると、施策の良し悪しをはっきり判断できます。ページから離れようとした人を引き止めるポップアップは、90 回表示されて登録が 0 件だったので撤去しました。ページのどの部分で読者が離脱するかを計測し、その結果をもとに構成を組み替えています。文言や画像の違いを比べる A/B テストの仕組みも整えました。
登録後も同じです。診断直後の声かけ、未回答者への追いかけ、入力途中の人へのフォローを自動で送り、どの声かけが相談につながったかを記録しています。時間軸で見ると次のようになります。
ボタンは押したのに登録に至らなかった人を毎朝検知し、取りこぼしがあった日だけ運営に知らせる仕組みもあります。
止めずに乗り換えた
既製品から自社基盤への移行は、一度にすべてを入れ替えるのではなく、段階を踏んで進めました。Lステップを動かしたまま自前の機能を積み上げ、受け皿が揃った時点で切り替えています。
- 1 か月目: 案内ページと、登録の計測だけを自前で用意。配信とアンケートは Lステップのまま並走
- 2 か月目: 運営向けの管理画面を公開。データを自社で受け取れる状態にする
- 3 か月目: Lステップが担っていた機能を一覧にし、それぞれの移行先を決めてから切り替え。切り替え作業そのものは 1 日。診断とアンケートも自前のものに置き換え
- 4 か月目: 自動フォローと提携企業向け画面を追加
- 5 か月目以降: 運用データを見ながら改善を継続
応募者の側からは、LINE の友だち追加もアンケートも、以前と同じように使えているだけで、裏側の入れ替わりは見えていません。
後から育てられるように作った
事業はこれからも変わります。そのとき手を入れられるように、作り方の面で次の点を守っています。
- 設定や構成を手順書ではなくコードとして残す。 サーバーの構成も環境ごとの設定値もコードで管理し、誰が作業しても同じ結果になるようにしました
- 自動送信は一括で止められる。 追いかけのメッセージは、設定を一つ変えるだけで全シナリオを止められます
- 外部からの通知は重複を前提に処理する。 LINE からの通知は同じものが二度届くことがあります。二度届いても二重に処理しない作りにしました
- 設計書を実装と同時に更新する。 機能ごとの設計書を 30 本以上保ち、担当が替わっても引き継げる状態にしています
いま、そしてこれから
データが自社の手元にあるので、「どの導線から来た人が相談に進み、成約しやすいか」を数字で見ながら、広告とページと声かけを改善し続けられるようになりました。開発は現在も続いており、応募者への一斉配信や、記事コンテンツによる集客の強化に取り組んでいます。
広告との連携は記事「LINE 登録を広告の成果として測る方法」、Lステップからの移行は記事「Lステップを解約する前に確認すること」で詳しく紹介しています。AI による分析や裏側の構成といった技術的な詳細は、別の記事で紹介する予定です。
この事例は「LINE の集客と顧客管理の仕組み」の一部です。 全体像を見る